高エネルギー重イオン物理の
新世紀の幕開け
CERNからRHICへ
筑波大・物理 三明康郎

クォーク・グルオンプラズマ生成!
Press Release (2/10/2000)
CERN・SPSの全重イオン実験グループによる共同発表
「観測された総ての観測事実を総合的に判断するとQGPが生成したと考えられる」但し「直接証拠」ではなく「状況証拠」
(1)J/ψ粒子抑制効果
(2)レプトン対質量分布
(3)ハドロン生成
生成比;化学平衡@170MeV
横運動量分布、HBT;運動学的平衡@120MeV

根拠(1)J/ψ粒子抑制効果
陽子・原子核衝突〜原子核・原子核衝突まで”生存率”系統的測定.
QCDにおけるデバイ遮蔽効果
QGPの温度と密度で決まる距離(デバイ半径)以上には色電荷
の作用が到達しなくなり、適当な半径をもつ中間子は壊される。

根拠(2)レプトン対質量分布
陽子・原子核衝突〜原子核・原子核衝突まで系統的測定
高温・高密度下におけるカイラル対称性の回復
カイラル対称性回復に伴うロー中間子の質量減少か?(初田他)
pBeからAAにおいて質的変化!

根拠(3)衝突の基礎的理解
ハドロン測定に基づく基礎的理解
Bjorken描像による到達エネルギー密度
QGP生成を期待できる温度を達成したのか?
ハドロンの生成比
化学平衡が成立したのか?
ハドロンの横運動量分布
運動学的平衡が成立したのか?

Bjorken描像
ローレンツ収縮のために原子核衝突は短時間の間に起こり、その短時間にハドロンの多重発生が起こるが、固有時τ以後、それらは自由粒子として飛び出す。

ハドロンの生成比;化学平衡
粒子生成比を化学的平衡を仮定した統計模型
様々な粒子生成比のフィットに成功(但し、縦軸は対数)
化学平衡時の温度が求まる
T〜170MeV
ストレンジネス増大率
K(s=1) ; 2倍, Ξ(s=2) ; 4倍, Ω(s=3) ; 15倍
より高温状態の存在を示唆
ストレンジネス生成の別機構;gg fusion (QGP)

ハドロンの横運動量分布;運動学的平衡
陽子・陽子〜陽子・原子核衝突;
傾きは粒子種に依らず一定
原子核・原子核衝突;
傾きは粒子質量に比例!
熱的生成源膨張模型により説明可

HBT相関測定
観測結果の特徴;
SPS;5〜6fm(Pb+Pb)
明らかな横運動量依存性が観測された
熱的生成源膨張模型により説明可
共通の膨張速度(Flow)により小さく観測される

熱的生成源膨張模型による統合的理解
1粒子包括測定とHBT測定の特徴が熱的生成源膨張模型で説明!
1組の(β,T)により理解される
より精度良く決めることが出来る
温度、集団運動強度の逆転(!?)
AGS   95 MeV  0.77c
SPS 120 MeV  0.55c

衝突の基礎的理解
熱的生成源膨張模型による統合的理解
生成比;化学平衡@170MeV
1粒子横運動量分布;運動学的平衡@120MeV
HBT粒子横運動量依存;集団的膨張@ 0.55c
重イオン衝突の時空的発展描像

集団運動?
観測された「集団運動」の本質;
各ハドロンのフリーズアウト時の座標空間と運動量空間に強い相関
Esumi; PRC55(97)R2163;PLB403(97)145;PRC60(99)031901
座標・運動量空間の強い相関は何によってもたらされたのか。
流体力学的取り扱い!?
動機; 流体力学的解釈の有効性が確立されると状態方程式に関する情報が得られる!
QGP相転移に伴う状態方程式の軟化

他のモードの集団運動
中心衝突;Radial Flow
非中心衝突;他のモード
Directed Flow
Elliptic Flow
方位角分布のフーリエ解析データ
流体力学的解釈のテスト
RQMDカスケード模型でも多くの信号を説明可
未決着問題

Directed Flow (n=1)
パイ中間子と陽子は反対方向に出る傾向
流体力学的解釈?

Elliptic Flow (n=2)
パイ中間子、陽子は反応面内に放出
K+は反応面に垂直方向に放出傾向
静的ポテンシャル模型
Chiral Perturbation Theory
定性的に結果を再現しうる!?

V1、V2のビームエネルギー依存性
V1;
エネルギーと共に低下
RQMDに比べてAGSでは大きく、SPSでは小さな観測結果
V2;
エネルギーとともに符号が逆転
RQMD模型
パイ中間子、陽子の振舞を説明、K+は逆符号。

Relativistic Heavy Ion Collider
Relativistic Heavy Ion Collider
1周約3.8km
右回り用と左回り用それぞれのビームライン
計864個の電磁石
実験室中央で右回りと左回りのビームが衝突

QGP検証を目指して
PHENIX実験の特徴
多くの手掛かりを同時に観測し、それらの相関をみることによって理論検証に耐えるデータにしよう!
ハドロン、電子、光子、ミューオンの識別測定
粒子識別装置

PHENIXグループ
PHENIX実験装置
PHENIX実験概要
PHX最初の衝突事象
平成12年3月から加速器調整開始
6月15日未明にPHX最初の衝突事象が観測
9月までに5M衝突事象を記録

荷電粒子多重度
ドリフトチェンバー及びパッドチェンバーによる荷電粒子多重度分布の測定
ほぼ同一の結果
Glauber Modelにより分布形状の説明可
中心衝突(約6%)では、dn/dη=540
Glauber Modelにより<Nparticipant>~345
SPS(√s=17.2 GeV/A)の鉛・鉛ではdn/dη=400
約40%アップした!

横エネルギー分布
電磁カロリメーターによる横エネルギー分布測定
Glauber Modelにより分布形状の説明可
中心衝突(約2%)では、dE/dη=570GeV
SPS(√s=17.2 GeV/A)ではdE/dη=405GeV
約40%アップした!
Bjorkenによる到達エネルギー密度
SPSに比べ少なくとも40%上昇

SPSとの比較
荷電粒子多重度・横エネルギーは約40%上昇
Participant Nucleon数で規格化すると約50%上昇
横エネルギー/荷電粒子数はやや増加
RHIC;(dE/dη)/(dn/dη )〜1.05
SPS ;(dE/dη)/(dn/dη )〜1.0
横運動量分布には大きな変化はないことを示唆

電磁カロリメーターによるπの測定
電磁カロリメーターによりπ→2γによる光子を観測
すべての光子・光子のInvariant Mass分布を評価
Combinatorial Backgroundを差し引き

横運動量分布
CERN・SPSのWA98実験との比較
より”高温”
飛跡解析装置解析による負電荷粒子と電磁カロリメーター解析によるπ粒子の横運動量分布
誤差の範囲で一致

荷電ハドロンの粒子識別
高時間分解能飛行時間測定器による粒子識別
粒子識別に十分な性能発揮
反陽子/陽子比〜60%?

粒子識別された横運動量分布
今後の解析;
strangeness and (net)baryon content Þ μS, μB
mean pT, variation of invariant cross section with pT Þ T
pT as function of particle species - evidence for collective motion? Þ b
Cross section for short-lived particles, such as w and f vector mesons

Elliptic Flow @ Phenix
全てのペアーについて(φ2)分布を求め、Mixed Eventで規格化
観測強度;vobs=v

のビームエネルギー依存性
構造見えず
QGP相転移がない?
QGP相転移への感度がない?
結果比較における系統的誤差のため?
陽子とパイ中間子の違い
測定方法の違い
Pt領域、y領域が一定ではない
きっちり比較が出来るような実験が必要?

まとめ
CERN;
熱的生成源膨張模型による統合的理解
生成比;化学平衡@170MeV
1粒子横運動量分布;運動学的平衡@120MeV
HBT粒子横運動量依存;集団的膨張@ 0.55c
重イオン衝突の時空的発展描像の確立!
QGPを示唆する様々な現象の発見
(1)J/ψ粒子抑制効果
(2)レプトン対質量分布
(3)ストレンジネス増大現象
RHIC;
加速・衝突の成功
PHENIX、STAR;1年目の測定の成功
CERNにくらべ荷電粒子多重度・横エネルギーは40%の増加
エネルギー密度も40%以上の増加か
今後の予定;
QM01までに
粒子識別した横運動量分布
粒子比
パイ中間子のHBT相関
2年目の測定以降
J/ψなど電子測定・ミューオン測定結果