放射線教育

 レントゲン撮影やX線CT,さらに陽子線や重粒子線を用いたガン治療など医療において放射線は不可欠な存在である.非破壊検査や食品照射など産業利用も盛んである.その反面,国民の放射線に関する理解は追いついていない.福島原発事故以降,放射線に関する知識の欠如が浮き彫りになり,放射線教育の重要性が再認識されている.

 ここで放射線教育の内容と目標について改めて考えてみたい.物質の階層構造,原子核の崩壊,放射線の性質などの基礎知識だけでなく,その恩恵やリスクについて学ぶ必要がある.さらに,マントル対流を引き起こす地熱の約半分が地球内部の天然放射性物質の崩壊熱に由来すると考えられていること,ウラニウムなど超重元素は超新星爆発において生成されることなど,ウラニウムの半減期のタイムスケールに思いを致すと,宇宙元素合成,地球や宇宙の歴史にまで想像を拡がらせることができるのではないだろうか.そう言った意味で放射線教育は,放射線の恩恵とリスクの問題に留まらず,私たちの自然認識の根幹に関わる内容を包含しているのである.

 さて,高等学校新学習指導要領の物理の原子の単元では,原子核の構成,原子核の崩壊及び核反応等を理解することが求められている.しかし,放射線測定器として高等学校の教科書に記載されている霧箱やGM計数管は,放射線の飛跡や量を測定することはできるが,原子核の崩壊や半減期,放射線のエネルギーについて学ぶための適当な実験教材は見当たらない.

 放射線教育における放射性物質使用の有用性は,以前から指摘されていたが,中高等学校の教育現場への放射線源の持ち込みや,その維持管理は大きな負担である.ラドンは空気中に広く存在し,また身近な岩石や土壌からも発生しているので対象として適当である.また,3.8日という比較的短い半減期を持つことから,数日間の連続測定によって放射能の減少を観測できるという利点もある.


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Last-modified: 2012-10-03 (水) 19:39:55 (1697d)