宇宙史セミナー2008

 場所: 筑波大学 自然学系棟 B119
 日時: ほぼ毎週火曜日 16:45〜

第1回 9月16日(火)
  • 「分光計安定性の向上とその評価方法について」
    荒井 均(宇宙観測 M2)
    筑波大学宇宙観測研究室は今年で創立5周年となり、先輩方の努力もあって、つくば国土地理院の口径32mアンテナの電波望遠鏡化が実現され、昨年から銀河や銀河系の本格的な観測研究を始めることができるようになった。しかし、受信機・分光計の出力安定性はまだ十分なものではなく、この不安定性はノイズ源となり、観測に支障をきたすことになる。今回は、特に分光計の安定性の向上にむけての研究経過と、その成果の評価方法について発表する。

  • 「Determination of Reaction Plane for jet study in ALICE」
    坂田 洞察(原子核実験 M2)
    我々高エネルギー原子核実験グループでは、CERNにおけるALICE実験において、ハイエネルギージェットのトリガー機能を備えたハドロンカロリーメーター設置を計画している。カロリーメーターのトリガー性能やジェットの再構成の性能を見積もるための前段階として、ALICE実験での反応平面決定について見積もる。

  • 「Hf-STJの開発研究」
    武政 健一(素粒子実験 M2)
    Hfを超伝導体電極として用いることで従来のものより優れたエネルギー分解能をもつSTJ検出器を作成することができる。Hf-STJの作成を目的として、Hf膜の成膜・加工条件を探索する。サンプルの作成・ADRでの冷却試験を繰り返し行いSTJ製作にもっとも適したHf膜を作成する。
第2回 9月30日(火)
  • 「国土地理院32m望遠鏡のラスタースキャン実用化に向けて」
    扇野 光俊(宇宙観測 M2)
    現在、宇宙観測研究室では、国土地理院の32mアンテナ電波望遠鏡を用いて、主に1-pointスキャンで天体の観測を行っている。しかし1-pointスキャンだけでは不可能な連続波天体の観測や、より効率的なマッピング観測を可能にするために、ラスタースキャンを実装・実用化させることを目指している。ラスタースキャンの原理や、それを実用化する上での今後の課題等について発表する。

  • 「LHC-ALICE実験におけるTRDの性能評価」
    佐野 正人(原子核実験 M2)
    現在、CERN-LHCにおいて、QGP物性の解明を目的とした高エネルギー重イオン衝突実験:ALICEが開始されようとしている。QGP物性を理解するうえで、J/psi粒子の収量抑制効果やジェット変貌効果の測定は非常に有用であるが、これらを詳細に調べるためには、高精度の電子識別測定が重要である。ALICE実験における電子識別は、主にTRD検出器によってなされるが、本報告では、CERNで行われたテストビーム実験の結果から、TRDの電子識別能力について報告する。

  • 「陽子・陽子衝突実験における横運動量分布の研究」
    梶谷 緑(原子核実験 M1)
    我々高エネルギー原子核実験グループでは、RHIC、PHENIX実験において原子核・原子核衝突と共に陽子・陽子衝突実験を行っている。陽子・陽子衝突における横運動量分布の粒子多重度の依存性について報告し、衝突のメカニズムやjet生成について議論する。

第3回 10月7日(火)
  • 「32mアンテナ性能評価と解析への導入」
    丸山 理樹(宇宙観測 M2)
    宇宙観測研究室では、32m鏡に20GHz帯の受信機を搭載し、観測を行っている。観測データの解析にあたり、アンテナの能率による測定値のスケーリングが必要となるが、アンテナの能率は主に仰角や観測周波数に依存して変化する。本セミナーでは、主に惑星の観測から測定した、仰角および観測周波数に対するアンテナ性能の依存性と、それらの解析への導入について報告する。

  • 「SOI技術を用いた半導体検出器の紹介」
    河内山 真美(素粒子実験 M1)
    SOI(Silicon-On-Insulator)技術は、絶縁膜でトランジスタどうしを分離する技術である。この技術を応用して、センサー部分とエレクトロニクス部分を一体化した半導体ピクセル検出器を開発している。高エネルギーでの利用も期待されているこの検出器について紹介する。

  • 「SOI技術を用いた半導体検出器の放射線耐性試験」
    瀬賀 智子(素粒子実験 M1)
    Silicon On Insulator(SOI)技術を用い、粒子検出を行う基板部シリコンと読みだしエレクトロニクスを一体化させた、pixel型検出器の開発を行なっている。放射線耐性試験として、pixel検出器のサンプルに陽子線を照射した結果について報告する。
第4回 10月21日(火)
  • 「アンモニア輝線の観測について」
    秋山 大樹(宇宙観測 M1)
    宇宙観測研究室ではつくば国土地理院の口径32mアンテナ望遠鏡を使用して観測を行っている。この望遠鏡を利用したアンモニアが出す輝線の観測について紹介する。

  • 「RHIC-PHENIX実験におけるAuAu衝突でのΛ粒子生成の研究」
    横山 広樹(原子核実験 M1)
    RHIC-PHENIX実験ではQGP物性の理解のため、重イオン衝突実験が行われている。Λ粒子は実験で生成される粒子のひとつであり、その質量が陽子やφ中間子と近いことからそれらの違いを議論することでQGPの性質理解につながると考えられている。今回の報告では、PHENIX-run7(Au+Au 200GeV)のデータを用いた解析の手順と現在の結果について紹介する。

  • 「SLHCのためのシリコンマイクロストリップ検出器の開発 」
    秦野 博光(素粒子実験 M2)
    SLHC実験のための高放射線耐性Nストリップ-Pバルク(n-on-p)構造のシリコンセンサーの開発を行っている。本発表では、ウェハーの種類、電極分離構造の異なったテストセンサーに、陽子もしくは中性子を照射し、性能評価を行った結果を報告する。
第5回 10月28日(火)
  • 「南極30cm可搬型望遠鏡受信機中間周波数部の開発と銀河観測」
    前橋 秀紀(宇宙観測 M1)
    筑波大学宇宙観測研究室は将来的に南極大陸内陸部のドームふじ基地にて口径10mの望遠鏡を建設予定であった。現在はプロトタイプの口径30cmの可搬型小型望遠鏡を開発中である。今回は観測対象や開発中の望遠鏡について発表する。

  • 「The Effect of Bowing SCT Sensors for ATLAS experiment」
    目黒 立真(素粒子実験 M2)
    2008夏のATLAS 内部飛跡検出器合同ミーティングにおいて、SCTセンサー面にゆがみがあるという報告がなされた。本研究では、そのゆがみの影響をモンテカルロシミュレーションを用いて評価している。今回は、トラッキングパラメータ及びアライメントアルゴリズムへの影響について報告する。

  • 「√sNN=200GeVの金・金衝突における2粒子相関を用いたjetの研究」
    浜田 英太郎(原子核実験 M1)
    現在、米国ブルックヘブン国立研究所では、原子核を衝突させることによって、QGPを地球上でを作り出し観測しようとする研究が行われている。このとき、たくさんハドロンが特定の方向に集中して放出されるjetと呼ばれる現象が発生する。本研究では、RHICを用いた実験の1つであるPHENIX実験が2007年度に行った核子対あたり200GeVの金金衝突の実験データから、2粒子相関を用いたjetの様子をみることで、QGPの性質を見ようとしている。今回はその解析の手順とこれまで結果について報告する。
第6回 11月4日(火)
  • 「次世代線形加速器実験のための電磁カロリメータ試作機によるpi0粒子質量の再構成」
    須藤 裕司(素粒子実験 M2)
    次世代線形加速器実験である international linear collidor 実験ではカロリメータのジェットに対するエネルギー分解能の目標をσ/√E = 30% に定めている。このような高い性能を達成するためにPFAをもちいるため、その効果を最大限に発揮できるカロリメータの建設が不可欠である。我々は CALICEの協力のもとでシンチレータストリップ電磁カロリメータ試作機(ScECAL)の性能評価を2008年8,9月に米国フェルミ国立加速器研究所で行った。そこで我々はScECALによるpi0粒子質量の再構成に挑戦し、その確かな可能性を得た。

  • 「SLHC用P型シリコン飛跡検出器のレーザーを用いた性能評価」
    三井 真吾(素粒子実験 M1)
    SLHC用にP型シリコン飛跡検出器の開発研究を行っている。今回は、陽子照射と中性子照射を行ったセンサーサンプルに対し、レーザーを用いて電荷収集効率の評価を行った。実際には、センサーは2Tの磁場中に置かれ、キャリアがローレンツ力を受けるので、その影響を小さくする角度にモジュールを設置する。その補正を行うために必要な詳細なデータを測定している。

  • 「LHC-ATLAS実験 SCTシリコン飛跡検出器のコミッショニング」
    林 隆康(素粒子実験 M1)
    ATLAS検出器の内部飛跡検出器の一部であるSCTは、現在地下のATLAS検出器本体にインストールが完了し、コミッショニング中である。本研究では、バレルSCTのノイズ、温度のモニター測定に基づき、他の検出器と組み合わされた状態でのSCTが、設計通りの性能を示し、データ収集を開始できる段階にあるかどうか評価する。
第7回 11月11日(火)
  • 「重心系エネルギー14TevのPP衝突におけるjet生成のシミュレーション」
    轟木 貴人(原子核実験 M1)
    ALICE実験では重イオン衝突の前段階として、PP衝突実験を行う予定である。解析の準備として、重心系エネルギー14TevのPP衝突におけるjet生成のシミュレーションを行い、現在のALICE検出器が持つjetアクセプタンスを見積もった。また、アクセプタンス向上のために、高エネルギー原子核グループが進めているJCALプロジェクトを紹介する。

  • 「FTBLを用いたATLAS-SCTモジュールの試験」
    塙 慶太(素粒子実験 M1)
    ATLAS検出器の内部飛跡検出器の一部であるSCTは、現在地下のATLAS検出器本体にインストールが完了し、コミッショニング中である。本研究ではSCTモジュール4台を並べ、高エネルギー加速器研究所内の富士テストビームライン(FTBL)において、飛跡再構成、検出効率などの評価を行った。

  • 「SCT検出器を用いたFTBLビームパラメータの測定」
    松隈 恭子(素粒子実験 M1)
    ATLASの内部飛跡検出器であるシリコン半導体飛跡検出器(SCT)は、位置分解能に優れている。本研究では、SCTモジュール4台を並べ、高エネルギー加速器研究所内の富士テストビームライン(FTBL)において、FTBLビームプロファイルを測定した結果を報告する。
第8回 11月18日(火)
  • 「LHCでのPbPb衝突におけるjet生成のシュミレーション」
    木村 瑞希(原子核実験 M1)
    LHCでは核子あたりの衝突エネルギー5.5TeVのPbPb原子核衝突が行われる予定である。今回はその衝突で出来たQGPが流体であることを考慮したjet生成のシュミレーションを行うことを目的とした研究の進行結果を報告する。

  • 「ILC用半導体光検出器MPPCの性能測定」
    高橋 優介(素粒子実験 M1)
    新しい光検出器としてMPPC(Multi-Pixel Photon Counter)の研究開発を浜松ホトニクス社,KEK,大学グループが協力して進めている.MPPCは半導体光検出器の一種で,ピクセル化したAPD(アバランシェ・フォトダイオード)を二次元に配列した構造をしている.本講演ではMPPCの基礎特性のピクセル数依存性の結果につて報告する.

  • 「CDF-TOF用光電子増倍管の長期安定性試験」
    深見 智代(素粒子実験 M1)
    CDF実験とはアメリカシカゴ郊外にあるフェルミ国立加速器研究所で行われている高エネルギー素粒子実験のひとつである。今回はCDF検出器中で粒子の飛行時間を測定する、TOF測定器に用いられているファインメッシュ型光電子増倍管の長期安定性試験について報告する。

(敬称略)