High pt Project at RHIC-PHENIX

RHIC-PHENIX実験のためのアエロジェロカウンター計画の概略

米国ブルックヘブン国立研究所(BNL)では世界初の衝突型高エネルギー重イオン衝突型加速器 (RHIC)の運転が2000年より開始された。2000年6月から9月には √s_NN = 130 GeV、2001年8月からは√s_NN = 200 GeV の金原子核同士の衝突実験が行われ、PHENIX実験では現在もデータ収集が進められている。

2000年のデータ解析から、生成粒子の dEt/dyから推定される初期エネルギー密度が √s_NN = 17 GeVで行われたCERN・SPSの 鉛・鉛衝突実験に比べ約60%上昇しているなどの興味深い結果が既に得られているが、 なかでも、多くの研究者が注目しているのは、 横運動量分布を中心衝突と周辺衝突を比較すると中心衝突では高運動量成分が 減少するという現象である。これは全く新しい現象であり、QGP中のJetQuench効果ではないか と考えられている。

2000年のデータ解析から、生成粒子の dEt/dyから推定される初期エネルギー密度は √s_NN= 17 GeVで行われたCERN・SPSの 鉛・鉛衝突実験に比べ約60% の上昇し、QGP生成が十分可能と考えられる エネルギー密度が得られた。K+・K−中間子生成比、反陽子・陽子生成比はより一層1.0に 近づき、化学平衡を仮定する熱的統計模型による解析では180MeVを越える 化学平衡温度が報告され、予測されるQGP相転移温度に近いことがわかった。 さらに、横運動量分布を中心衝突と周辺衝突を比較すると中心衝突では高運動量成分が 減少する結果が得られた。電磁カロリメーターによるパイゼロ中間子測定においても 磁気スペクトロ メーターによる荷電粒子測定においても同様の傾向が見られた。 CERN・SPSまでには 見られなかった全く新しい現象であり、QGP中の JetQuench効果である可能性が高い。

QCDによるとJetQuench効果はクォークジェットにくらべグルオンジェットに より強く現れると期待され、運動量分布の変化以外にも、高運動量領域における陽子・反陽子比 などの粒子生成比の変化となって現れることが既に予言されている。 様々な粒子の様々なチャンネルにおいてQGP固有の現象を捕まえようとするPHENIX実験の 基本戦略から考えても、今後数年後に予定されているPHENIX実験のアップグレードにおいて ハドロンの高運動量領域における粒子識別能力を高めることは重要と考えられている。

PHENIX実験には、筑波大学のチームが中心になって開発・製作した飛行時間測定器 (時間分解能100ピコ秒以下)、さらにエタンやCO2ガスをラディエーターとするRing Imaging Cherenkov Counter(Index;1.00041-1.00044)が既に稼働しており、アエロジェロチェレンコフ カウンター(Index 1.01)を新たに付加することによって、10 GeV/cまでの 陽子/K中間子/パイ中間子の選別が可能となる。

筑波大のチームではアエロジェロチェレンコフカウンターの 開発・製作をBNLやロシアなどのチームと協力して進めている。