筑波大学学内誌「つくばスチューデンツ」平成10年度No.15に掲載されました

研究の国際化と筑波大生

自然学類 学生担当教官 三明康郎

 自然学類では大学院への進学率が高く、卒業研究から参加した研究室で修士課程2年もしくは博士課程5年を過ごす学生を多く見受けられます。半数以上が大学院に進学し、その後も研究職に就業することが多いことが特色です。
 色々な場面においてグローバル化が進められていますが、研究の世界ももちろん例外ではありません。公立の研究機関でも企業の研究でも、国際的な研究開発の動向や世界への情報発信が極めて重要となっています。研究の形態としても、互いの長所を生かして効率よく研究を進めるために、国際共同研究グループが作られます。本学においても、このような国際共同研究が日常的に行われています。
 私達の研究グループでは海外の研究機関で国際共同実験を行っており、修士や博士課程の大学院生は、数カ月〜数年間、海外の研究所に滞在し研究をしています。現地の研究者やMITやコロンビア大学などの大学院生とも協力しつつ研究を進めることになります。実験作業を共同して行ったり、解析のプログラムを共同開発したりする際に、共同研究者としっかりしたコミュニケーションをとることができるということが重要であることはいうまでもありません。単に意志の疎通を図ると言うことだけでなく、共同研究者と人間関係を確立することが大切になります。
 学内にいると気がつかないのですが海外の研究所に行った時には、筑波大生は東大生や京大生に比べると、スムースに現地にとけ込むように思います。筑波大生を見ていると、人と人がコミュニケートする場面で言語能力以上のものが発揮されるようです。数年前にジュネーブの研究所に滞在した院生の場合、パーティで泥酔するという”豪傑”ぶりも発揮したようですが、”サムライ”と渾名を頂戴して、たちまち人気者になりました。実験準備や解析で着実な研究成果をあげてくれました。その研究成果が国際会議で発表されたことも記憶に新しいです。彼の場合だけでなく、多くの筑波大生に海外の大学院生や研究者と日常的に議論をして研究テーマを発掘する積極性が見られることは、大変喜ばしいことです。
 従来型学歴社会の崩壊はますます進行し、大学における授業で身につけた基礎学力や専門知識だけでなく、何かプラスアルファーが求められていることを改めて認識して欲しいと思います。国際的な場面に自分をおいてみて初めて新たな長所を発見できることも確かです。漫然と惰性的に大学院を選ぶのではなく、何かプラスアルファーを身に付けようという問題意識を持って進学されることが肝要だと思います。

(写真)欧州共同研究機構における国際共同研究に参加する筑波大生。