next up previous contents
次へ: 目次 上へ: クォークグルオンプラズマ検出のための ペストフ飛行時間測定器の開発 戻る: クォークグルオンプラズマ検出のための ペストフ飛行時間測定器の開発   目次

はしがき

本冊子は、文部省科学研究費補助金(基盤研究 (c)(2)、平成10〜11年度) による「クォークグルオンプラズマ検出のためのペストフ飛行時間測定器の開発」 の研究成果報告書である。

量子色力学の最近の計算によると、クォークとグルオンの多体系は高温高密度状 態となると通常のハドロン状態から、クォークとグルオンが大きな体積内を自由 に動き回れる状態、即ちクォーク・グルオン プラズマ(QGP)状態に相転移を起 こすとの理論的予測が得られている。達成に必要とされるエネルギー密度は高エ ネルギー重イオン衝突によって十分到達が可能と考えられ、実験室でこの新物質 QGPを生成、研究することができると期待されている。ビッグバン直後の宇宙 はQGP状態であったと考えられており、QGPが宇宙のその後の展開に与えた 影響等、QGPの問題は原子核、素粒子、宇宙物理の基本的問題であるだけでな く、人類の自然認識の根幹に関わる大問題である。

高エネルギー重イオン衝突によるQGPの生成とその性質の研究のため に、複雑な原子核・原子核衝突反応を理解し、かつQGP生成の重要な 証拠を得ることの出来るハドロン識別測定は必須である。ところが、実 験技術的観点からは、ハドロンの識別測定は高エネルギー重イオン衝突 の高粒子密度状態で実施することは困難が伴う。幅広いハドロンの粒子 識別を行うことの出来、かつ信頼性の高い方法として高時間分解能飛行 測定法がある。

高時間分解能飛行時間測定器として様々なタイプのものが知られているが、BN L・RHIC実験やCERN・LHCにおけるALICE実験など超高エネルギー 重イオン衝突では発生する荷電粒子が多いために、検出器のチャンネル数を多数 必要になること、また、検出器上で粒子密度が非常に高くなる。この条件を満た す測定器として、ペストフ・スパークカウンターと呼ばれる放電を利用した測定 器がある。古くから知られているが、余り成功例はなく、主要実験において運用 され成功した例はいまだなく、幾つかの深刻な問題点が明らかになってきている。 本研究は、これらの問題点の原因を解明し、 解決策を探ることを目的としている。




研究組織;
研究代表者; 三明康郎 (筑波大学・物理学系・教授)
研究分担者; 佐甲博之 (筑波大学・物理学系・助手)(平成10年)
    (現在は独GSI研究所・研究員)
  佐藤 進 (筑波大学・物理学系・助手)(平成11年)
    (現在は日本学術振興会海外特別研究員)




研究経費;
  平成10年度 2,400千円
  平成11年度 900千円
  3,300千円




研究発表;

  1. 学術誌、国際会議招待講演等;

  2. 口頭発表;

  3. 学位論文;

現時点において、ようやく問題解決の端緒が見いだされた段階であり、現在も研 究を継続している。従って、本成果報告書も経過報告的性格がある点をご容赦頂 きたい。未発表の興味あるデータも残っており、今後の発表論文にも注目をいた だきたい。多くの研究者に利用していただければ幸いである。









平成13年3月 研究代表者 三明康郎

next up previous contents
次へ: 目次 上へ: クォークグルオンプラズマ検出のための ペストフ飛行時間測定器の開発 戻る: クォークグルオンプラズマ検出のための ペストフ飛行時間測定器の開発   目次
平成13年5月2日