PHENIX実験における筑波大グループの貢献

 国際共同実験PHENIXは、RHIC加速器を用いた2大実験グループのひとつである。筑波大グループは計画立案の段階から参画し、様々な重要な貢献を行ってきた。PHENIX実験における私たちの大きな貢献は、
(1)
私たちが開発・製作した高時間分解能飛行時間測定器によるハドロンの粒子識別(科研費・特別推進研究(代表者;筑波大・三明))、
(2)
私たちが解析方法を確立した反応平面決定技術(筑波大・江角)、
の2点である。

 RHICからの幾つかの重要な発見のなかで、QGP生成と、その性質の解明に大きな手掛かりを与えてくれたのは、

(a)
バリオン収量の異常増加現象(Baryon Dominance)、
(b)
大きな方位角異方性と、その粒子依存性(Mass Ordering of v2)、
である。私たちが誇りとしているのは、(a)は(1)の飛行時間測定器による粒子識別によって達成が可能となった研究結果である。(本学大学院出身の中條達也氏(現筑波大講師)が原子核談話会新人賞を受賞)。本成果は、QGP研究に多大な影響を与えることになった「クォーク融合模型」の誕生の大きなきっかけをあたえることとなった。(b)の成果は、(1)の技術と(2)の技術を組み合わせることによって得られた成果であり、筑波大学グループの大きな貢献である。この実験結果の理論解析から0.6 fm/cという非常に短い熱化緩和時間が理論家から主張され、上記クォーク融合模型成立と共にクォークグルオンプラズマが生成していることと、その流体力学的性質を表す重要な証拠と考えられている。

2011.4現在までに371本の論文を発表しているが、CITATION順にTOP5をリストすると以下の通りになる。


注)1)はPHENIX実験のサマリー論文として編纂されたものであるので、本当の意味の原著論文ではない。

 ここで我々が誇りとしているのは、4)と5)の2編の論文は、科研費・特別推進(代表;三明康郎、ハドロンの系統的測定によるクォークグルオンプラズマのための基礎的研究、平成6年度−9年度)で開発・製作した高時間分解能飛行時間測定器による結果であることである。4)は本研究グループの中條氏、5)は江角氏が執筆責任者として書いた論文である。