印加電圧4.5kV 、ガス圧9 bar の条件下で運転を行い、ペストフ・スパークカ ウンターの信号の観測を行った。宇宙線でトリガーされたデジタルスコープ (LeCroy社製)で波形を観測した。2m程度のRG58同軸ケーブルを用いてい る。ペストフ・スパークカウンターからの信号は立ち上がり時間がと極 めてシャープな信号が得られた。高速応答性能を持つシンチレーターと光電子増 倍管を組み合わせたスタートカウンター1はであった。ペストフ・スパー クカウンターは、プラスチック・シンチレーションカウンターより、立ち上がり 時間が約3 倍速いことがわかった。高速時間応答が得られたといえよう。
しかしながら、ペストフ・スパークカウンターの信号には、程度遅れた2 次パルスを伴っている事例が多く観測された。ペストフ・スパークカウンターの 放電模型計算による電子なだれの伝搬速度から考えて、紫外光により飛び火した 信号と考えられる。ペストフ・スパークカウンターには紫外光による飛び火が運 用上大きな問題となりうることを示唆している。
宇宙線トリガーによりデータ収集を行い、2組のスタートカウンターをリファレ ンスとしてペストフ・スパークカウンターの時間分布を求めた。図 5.5は、測定開始から4 時間以内の時間分布である。比較的シャー プなピークに遅い分布(テイル成分)が重なった2重構造を示している。これは GSI等でも明らかにされたペストフ・スパークカウンターの重大な問題点であ る。まず、比較的シャープなピークに注目し、ガウス分布でフィットを行った。 得られたはピコ秒であった。2組のスタートカウンターの リファレンスの固有時間分解能はピコ秒であったことからペストフ・スパー クカウンター固有の時間分解能はピコ秒と求まった。これは飛行時 間測定器として決して悪くない結果である。また、今回、運用したガス圧が9気 圧であることを考えると、この時間分解能は報告されている時間分解能と矛盾し ない結果であることがわかる。
以上の結果より、試作したペストフ・スパークカウンターは報告されている結果 と矛盾しない時間特性を示していることが明らかとなった。同時に、時間分布の 2重構造という問題点も確認されたことになる。さらに、時間分布の2重構造の 問題が時間と共に悪化する様子が明らかとなった(後述)。