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検出効率の時間変化

ペストフ・スパークカウンターの運転時間とともに検出効率がどのように変化す るか測定を行った。宇宙線トリガーに対してペストフ・スパークカウンターから の信号の有無を測定し、検出効率とした。この際にトリガー系の立体角による補 正を行った。印加電圧4.5kV 、ガス圧9 bar の条件下で運転を行い、運転時間 の関数として検出効率を求めたのが図6.1である。縦の誤差棒は統計 誤差を横の誤差棒は測定時間の範囲を示している。最初の4時間で平均した検出 効率では85%程度が得られたものの、時間と共に減少する様子が見られた。ま た、24時間の運転後に陰極を観察すると、陰極表面に付着物が視認された。陽 極には変化は認められなかった。この付着物はアセトンに融けることがわかった。 そこで、陰極をアセトン中に浸して洗浄をおこなって、再び検出効率を測定した ところ、検出効率は元の状態に再生していることがわかった。同じ電極を用いて 24時間運転毎にアセトン洗浄を行って測定した検出効率を図6.2に 示す。2回の洗浄後も検出効率は誤差の範囲で再現していることがわかる。

図 6.1: 試作したペストフ・スパークカウンターの検出効率の時間依存性。 本試作器では経年・経時変化を強調して観測するためガスの循環速度を低く 抑えてあるためにGSI等の運用目的で試作されたペストフ・スパークカウ ンターに比べて著しい効果となって見えている。
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図 6.2: 同じ電極を用いて24時間運転毎にアセトン洗浄を行って測定 した検出効率。本試作器では経年・経時変化を強調して観測するためガス の循環速度を低く抑えてあるためにGSI等の運用目的で試作されたペス トフ・スパークカウンターに比べて著しい効果となって見えている。
\includegraphics[width=12cm,clip]{fig_14_5.eps}

次にガスの循環速度依存性を調べた。本機では封入した高圧タンクを用い容器内 に設置したファンによってガスの循環速度をコントロールしている。ファンを停 止した場合と2種類の口径のファンを比較することによってガス循環量を変化さ せた(図6.3)。ファンの口径を大きくすると検出効率の減少はゆっ くりとなり、運転開始後10〜25時間の平均値でも4cm口径のファンに比べ て1.5倍程度の検出効率が得られている。従って、ガス流量を増加すると検出 効率減少速度が遅くなることがわかった。ファンを停止させると急速に悪化する 様子が明らかとなった。

ガスを封入しても高電圧をかけなければ検出効率の悪化は起こらなかった。以上 のことから、検出効率の低下はギャップ間でスパークを起こすことによって陰極 に付着物が生成することによる影響であることがわかった。

図 6.3: 検出効率のガス循環速度依存性。高圧ガスを封入した高圧タンク中 で、容器内に設置した2種類の口径のファンによってガスの循環速度を変化させた。
\includegraphics[width=12cm,clip]{fig_14_8.eps}



平成13年5月2日