前章までに述べてきたように我々の試作器から運転時間と共に次のような変化が 見られた。
特に第2点の問題は以前よりペストフ・スパークカウンターの問題点として指摘 されてきた問題であり、本試験の当初目的を満たして顕著な形で再現する事が出 来たと言えよう。
これらの特性悪化の第1要因として考えられるのは、電極陰極へのポリマーの形 成の影響である。このポリマーは紫外光の吸収測定からクエンチャーガスとして 本機で使用した混合ガスの吸収領域と陰極物質として使用したアルミニウムの仕 事関数の丁度間隙の波長帯に相当しているために、放電の成長そのものに大きな 影響を与えたものと理解できる。確かに、我々の放電カスケード模型計算からも 時間特性は紫外光発生・吸収のパラメータに鋭敏に反応したことからも理解でき る。一方で、陰極表面の一定のポリマーはその吸収波長帯からクエンチャーガス の働きを補填する物質として考えることも出来、GSI等では積極的にポリマー 生成を電極のエージングプロセスとして取り入れようとする考えもあるようであ る。 ポリマー層が着いた状態でもストリーマ放電に十 分達しうる高電圧をかけることによって、時間特性の改善を図る道も否定しえな いが、ポリマー層が放電のプロセスで発生する以上、長時間の運転において厚み をコントロールすることは極めて困難であると思われる。起こるべき経年変化を 単に引き延ばすことにしかならず、抜本的解決ではないと思われる。