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当初研究計画達成状況の概要

(研究実績報告書、研究経過報告書等より抜粋)

平成10年度;

我々の開発において、(1)高粒子密度下における性能、(2)経年変化、が重要な案件である。プロトタイプ試験のための高圧ベッセルを製作し試験を開始した。一方で、本検出器の開発に関して先行しているドイツのGSIグループからの情報によると、100ピコ秒を切る高時間分解能を得ることは可能でありながら、約5%〜10%の150ピコ秒より広い分布の時間分布が重なった2重構造を示している。2重構造を示す可能性として、(1)高速荷電粒子通過時の発生電子数の統計の影響、(2)カスケード時の揺らぎの影響、(3)紫外光発生による飛び火の影響、(4)発生紫外光のガス中での吸収による放電の局在化の影響をシミュレーションにより調べている。その結果、現在行っている仮定のもとでは、(4)以外では、大きな影響を及ばさないと言う結果となっている。本年度も計算は引き続き続けるが、紫外光発生が重要な鍵を握っていると考えられ、紫外UVレーザーパルスを高圧ベッセル内に導入するための装置を高圧ベッセルに取り付けることとした。 次年度は、シミュレーションの計算と比較できるように、ギャップ間隔、ガス圧などの条件を変えながら、電荷量、光量等を測定していきたい。

平成11年度;

  ペストフスパークカウンター の開発において、(1)高粒子密度下における性能、(2)経年変化、が重要な案件であった。プロトタイプ試験のための高圧ベッセルを製作し試験を開始する一方で、本検出器の開発に関して先行しているドイツのGSIグループからの情報を得て参考にした。それによると100ピコ秒を切る高時間分解能を得ることは可能であるが、約5%〜10%の割合で約150〜200ピコ秒の広い幅をもつ分布とが重なった2重構造を示している。この2重構造は本検出器の目的にとって致命的欠点であり、その原因として、(1)高速荷電粒子通過時の発生電子数の統計の影響、(2)カスケード時の揺らぎの影響、(3)紫外光発生による飛び火の影響、(4)発生紫外光のガス中での吸収による放電の局在化の影響が考えられるが、これらの可能性をシミュレーションにより調べた。その結果、紫外光発生が最も大きな影響を与えているとの結果が得られた。 このようにペストフスパークカウンターには問題点が多く、実用化には困難な点が多い。最近になって複数の平行平板電極を用いて上述の問題点を回避しようと言うアイデアが出され一定の成果を挙げているようである。この方向についても今後は検討を進めている。

平成12年度;

ペストフ・スパークカウンターを製作し、経年変化・経時変 化に特に着目したテストを行った。試作したペストフ・スパークカウンターの運 転時間と共に、(1)検出効率の低下、(2)幅が広く時間の遅い第2成分の増 加、が観測された。電極陰極へのポリマーの形成が第1要因であることがわかっ た。 このポリマーは紫外光の吸収測定からクエンチャーガスとして 使用した混合ガスの吸収領域と陰極物質として使用したアルミニウムの仕 事関数の丁度間隙の波長帯に相当しているために、放電の成長そのものに大きな 影響を与えたものと考えられる。我々の放電カスケード模型計算からも 時間特性は紫外光発生・吸収に大きな影響を持つことが示された。

陰極への付着を防ぎ、かつ付着物の影響を最小に留めることが現時点で考えられ る最善の策と思われる。そこで、(1)仕事関数の高い陰極物質の使用、 (2)エチレン、イソプレン以外のガスの使用、(3)陰極の高温化、の 提案をおこなった。これにより、混合ガスの吸収波長領域と陰極の仕事関数の 間にギャップを避け、またポリマーを作りやすい二重結合を持つガスを排除する ことができる。経年変化の軽減をはかることができると期待している。



平成13年5月2日