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時間分布への影響

運転時間と共に放電の様子が変化していく原因とメカニズムが明らかとなったが、 その時間測定への影響を調べた。既述の通り、運転開始後0〜4時間の時間分布 は比較的シャープなピーク(第1成分)に遅い分布(第2成分)が重なった2重 構造を示している。第1成分のガウスフィットによる$ \sigma $$ 130 \pm 7$ピ コ秒であった。

図 6.7: 測定開始から4 時間以内(上)と10〜24時間(下)の時間分布の比較。
\includegraphics[width=10cm,clip]{fig_14_13.eps} \includegraphics[width=10cm,clip]{fig_14_14.eps}

比較のために、0〜4時間の時間分布の第1成分を図示している。図 6.7の比較から付着物形成とともに信号の時間が遅れ、時間幅も拡 がっていることがわかる。図4.15 は、効率(横軸)と時間分布のRMS (縦軸) の関係を示す。運転時間と共に付着物が形成することによって効率が減少すると 共に時間分布が広がり時間分解能が悪化していく様子がわかる。

図 6.8: 検出効率と時間分布のRMS 。付着物が形成によって検出効率が減少し、 時間分解能が悪化していく様子が見られる。
\includegraphics[width=10cm,clip]{fig_14_15.eps}

時間分解能悪化の一因として、信号出力が低下するために既述のSlewing 効果に よって時間分解能が悪化することが考えられる。確かに時間の経過と共に信号出 力が低下する傾向が見られるので、時間分解能への影響を検討を行った。図 6.9に、ペストフ・スパークカウンターからの信号電荷の積分値と スタートカウンターを基準としたペストフカウンター信号時間の散布図を示す。 確かに信号電荷が低い方が時間が遅くなる傾向は見られるものの、測定前期(0〜 4時間)と後期(10〜24時間)では同じ信号電荷であっても時間が最大5n sも遅くなっている。従って、いわゆるSlewing 効果のみで時間分解能の悪化は 説明が出来ない。

一方で、信号電荷が十分に大きな領域では時間の遅れは見られない。測定前期 (0〜4時間)と後期(10〜24時間)で信号電荷が十分に大きな領域に限定 して時間分解能を比較したところ有意な差は見られなかった。(図 6.10)

図 6.9: ペストフ・スパークカウンターからの信号電荷の積分値と スタートカウンターを基準としたペストフカウンター信号時間の散布図。
\includegraphics[width=10cm,clip]{fig_14_18.eps}

図 6.10: 信号電荷が十分に大きい(ADCmean > 7)時の時間分布の比較。 測定前期(0〜4時間)と後期(10〜24時間)で有意な差は見られない。
\includegraphics[width=10cm,clip]{fig_14_20.eps}



平成13年5月2日