第2期 (2022-2026)
筑波大学・ユトレヒト大学 CiC 研究ユニット(以下、UT-UU 研究ユニットと略)は、引き続き ALICE FoCal プロジェクトを先導します。
FoCalプロジェクトの正式承認を受けて、UT-UU研究ユニットは複数のリーダーFoCal プロジェクト内にいる、筑波大学・ユトレヒト大学が主導する大型国際プロジェクトに発展しました。 今後5年間は以下の4つの目標を掲げています。
1) 最終的な研究開発の完了、
2) 技術プロポーザル (TDR) の策定、
3) 建設のための大型外部資金獲得 (例: 科研費・特別推進研究) 、
4) FoCal の構築と物理導出
1)-4)を実施することにより、UT-UU研究ユニットが世界トップクラスの教育・研究拠点となることが大いに期待されます。
研究計画 (2022 – 2026年度)
・2022年度
FoCal-E PAD の最終試作機を製作し、CERN 加速器のテストビームラインを使用して性能評価実験を行います。日本では、理化学研究所 小型中性子源システム RANS、東北大学電子光理学研究所 (ELPH)や高エネルギー加速器研究機構(KEK)の新規ビームラインを使用して、FoCal-E PAD 検出器の読み出しテストと放射線耐性テストを行います。得られた結果は、技術提案書(TDR)および投稿論文にまとめ、LHCC 国際委員会に提出します。 TDR の承認は、FoCal 建設に進むための重要なステップです。同時にFoCal 建設のための大型外部資金獲得を目指します。
・2023年度
最終的な FoCal の研究開発、TDR の準備と提出を行います。
・2024年度
FoCalの建設を開始。 同時にFoCal-E モジュールの性能評価実験をKEK テストビームラインで実施。最終モジュールとなる”mini-FoCal”を製作(第4試作機)。
・2025年度
FoCalの建設を継続。2024年度に製作した mini-FoCal を ALICE実験に導入し、実際のLHC 衝突ビームで性能を評価します。
・2026年度
FoCalの建設を継続し、検出器の較正を行います。FoCalの導入準備を行います。
期待される成果
- FoCalでは、以下の成果が期待できます。
(1) 世界初の「カラーガラス凝縮(CGC)」の観測
(2) 世界初となる小さな x 領域の原子核内グルーオン分布を世界最高精度で測定
(3) クォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)の生成起源と早期熱化機構の解明
これらは量子色力学の特性、質量の起源、および初期宇宙に関連する、物理学上の最重要課題の1つである。FoCal は、それらの重要かつ基本的な課題を明らかにします。
また、これらの研究を推進することにより、次の成果も期待されます。
- QGP 物理に関する世界トップクラスの教育研究拠点の実現
- 筑波大学、ユトレヒト大学、グルノーブル大学、CERN研究所を拠点とした、ダブルディグリープログラムの推進、教育・研究プログラムの実施、国際的な科学コミュニティで活躍できる博士研究員・若手研究者の育成
- FoCalの技術を他の実験に応用(例:EIC(アメリカ)、J-PARC(日本)の検出器)。
- FoCalの技術を医療に応用(プロトンCT等)
将来展望(研究機関との連携)
- ユトレヒト大学:FoCalの研究・教育拠点として展開
- CERN:CERN所内にFoCalラボを設置(2022年6月から運用開始済)
- 理化学研究所:小型中性子源システムの利用、耐放射線性(RANS)(2021年利用開始)
- グルノーブルLPSC:PhDダブルディグリープログラム(2名修了、2名在籍)、修士課程物理学ダブルディグリープログラム開始(2023年頃を予定)
- KEK:検出器プラットフォーム、新テストビームライン(2022年~)