素粒子に働く「強い力」を記述する量子色力学(QCD)において、「カラーグラス凝縮(CGC)」という未発見な状態が存在します。この状態はQCD が予言する高密度グルーオン物質であると同時に、高エネルギー重イオン衝突で出現するクォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)の初期状態と考えられており、我々の「強い力」に対する理解の根源に関わっています。これまで多くの探査が行われてきましたが、明確なCGCのシグナルは得られていません。
我々の研究グループは高粒子密度下でも透過プローブを捉えることができる、高精細シリコン電磁カロリメータ検出器「FoCal」を開発しました。今回、このFoCalを ALICE 実験の超前方に新たに建設し、この領域での直接光子、中性中間子、ジェットを世界で初めて測定することにより、CGCの存在の有無やその本質を明らかにします。また重イオン衝突で出現するQGPの生成起源、早期熱化機構を解明します。本プロジェクトは、日本チームが主導する、ユトレヒト大学、グルノーブル LPSC 研究所等を参加機関に含む、新しい国際共同実験です。