ペストフ・スパークカウンター は20年以上前にY. Pestovにより提案されたシングルギャップの 平行平板型粒子検出器である(2.1)。 12気圧の気体を用い、ギャップ長100μmの電極間に、最大6kVの電圧を 印可して使用する。主な動作原理としては、ギャップ間を荷電粒子が通過すると、 希ガスとしてアルゴンを用いた場合電離損失により平均4、5個の電子がギャップ 中に生成されるが、それらが印可電場により加速され、アノードに向かって電子 なだれを引き起こし、電極間に放電が生じる。この放電を、アノード上に置かれ たストリップラインを通してシグナルとして読み出す。ストリップラインにより、 平板上で2次元の位置検出も可能である。ストリップラインの縦方向については、 ストリップラインの両端でシグナル到達時間の差を求めることで位置を知ること ができ、横方向については、誘起された数本のストリップの電荷量をはかり、 その電荷量の中心を知ることにより位置がわかる。
カウンターの電極の大きさは のものが使用される。 これが直径5 cmの円筒状の高圧容器に収められる。
気体は希ガスをベースとし、以下のように最適化された圧力比で、 3種類の高分子気体を混合したものを使用する 。 0.07[bar] C + 0.3 + 2.4 + 9 Ar = 12 [bar] : 1,3‐ブタジエン、 : エチレン、 : イソブタン
これらの混合された高分子気体は、電子なだれ生成時に大量に発生する光子を吸 収する働きをする。これにより、吸収を逃れてカソードに到達した 光子がその表面から電子をたたき出すことにより起こる多くの2次なだれは抑制 され、放電が電極全体に広がるのを抑えることができる。特にイソブタンについ ては、放電の局所化にはもっと小さな分圧で十分であるが、より良い時間分解能 を得るために2.4 barが選ばれている。また、ペストフ・スパークカウンター のアノードの材質には、 以上の抵抗率をもつ 2mm厚の半導体ガラスが用いられ、放電の局所化を図る。こうして 不感領域を小さく抑え、粒子を検出しながら他の領域はまだ検出可能領域として 残されるため、検出器として高多重度に対応できる。また、回復するまでの時間 が短くて済み、不感時間を小さく抑えることができるため、高いCounting Rate が得られる。さらに放電の局所化により、電極へのダメージを抑える。
カソードの材質には、主にアルミニウムや銅などの金属が用いられる。 検出器としての振る舞いはカソードの材質にはあまりよらないが 、一様な電場を得るためには電極表面 を均一にする必要があるため、扱いやすさが要求される。 ペストフ・スパークカウンターは時間性能が大変良く、時間分解能は最高で 25psが報告されている。また、96%以上の高検出効率が得られると主張されている。
典型的なペストフカウンターのパラメーターは以下の通りである 。