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さて、模型2の再現性が良いことがわかったので、他のペストフ・スパークカウ
ンターの運転パラメーターの検討を行った。まず、ギャップ長の違いが時間分布
に与える影響を検討した。結果を図4.17に示す。どちらも横軸は時間
である。比較のためにギャップ長によらず電場は一定(
)とした。
ギャップ長の変化により、時間分布に以下のような影響がもたらされると考えられる。
- 電離損失の違いにより、ギャップ中で生成される初期電子数が変化する
- 高分子ガスによる光子吸収確率は、生成された光子のカソードからの距離に依存しているため、全事象当たりの紫外光の効果を含んだ事象の割合に影響する
- ストリーマーに転換できないような小さな電子なだれによる時間的な揺らぎの影響を含んだ事象の、全事象に対する割合に影響する
- 電子なだれ中の電子伝播速度が一定と考えたとき、シグナルの最大遅れの違いによりカウンター分解能に影響する
図4.17の左は、ギャップ長200、平均初期電子数10個の場合で
あり、右は、ギャップ長50、平均初期電子数2個の場合である。ギャップ
長200では第一成分の時間分布の広がりは600ps程度で、Tail成分だけでは
80ps程度である。ギャップ長50では第一成分の最大の広がりは200ps程度
で、Tail成分だけでは80ps程度である。よってギャップ長にかかわらず、生成さ
れた光子がカソードに到達できるような初期電子の生成位置の範囲は一定である
と考えることができる。この範囲内に初期電子が生成される確率はギャップ長が
短い方が大きくなり、よって、ギャップ長が短くなるにつれて紫外光の影響が大
きく現れるのである。また、ギャップ長50では100ps以下でガウス分布か
ら少しはずれ、分布の量が増加しているようにみえる。これは初期電子生成位置
がアノードから10以下で、電子数が個に満たないような電子なだれ
によるものであり、ギャップ長が短くなるとストリーマとしての
シグナル以外の影響もあらわれると考えられる。
初期電子数以外の影響を見るために、平均初期電子数5個でギャップ長を変えて
計算を行い、カウンター分解能とTail成分の割合をまとめて、表4.3
に示す。
これより、ギャップ長が小さくなると、カウンター分解能は向上するが、光子が
カソードに到達する確率が大きくなり、
Tail成分の割合は増えるといえる。
図 4.17:
ギャップ長の違いによる影響(模型2)。
上は初期電子がアノードから30の位置で生成したときの時間分布.
下はアノードから90の場合.横軸はpsを単位とする時間軸である.
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表 4.3:
初期電子生成位置の違いによる時間分布の平均値と分解能
ギャップ長 [] |
平均初期電子数 |
分解能 [ps] |
第2成分の割合 |
50 |
2 |
30 |
17 |
50 |
5 |
29 |
28 |
100 |
5 |
52 |
16 |
200 |
10 |
89 |
12 |
200 |
5 |
133 |
7 |
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平成13年5月2日