以上の計算から発生初期電子の統計は大きな影響を与えることがわかった。特に、 ギャップ間における初期位置に大きく影響を受ける。ここでは、初期電子生成位 置の違いによる、時間分布への影響を見るために、初期電子生成位置を固定して 時間分布を求めた。
模型1を用いた、初期電子生成位置の違いによる影響を図4.15に示す。 横軸はpsを単位とする時間軸である.ここで左図は、アノードから30の 地点で初期電子が生成された場合の時間分布である。電子なだれのみによる鋭い ピークと、それより遅れて紫外光による飛び火の効果があらわれた。また右図は アノードから90の地点で初期電子が生成された場合の時間分布である。紫 外光の分布も30に比べて広がっているのがわかる。これらを見ると、第一 成分の分布は主に初期電子の位置の違いによるといえる。 また、初期電子生成位置がTail成分の割合に影響を与える。
模型2においても同様に初期電子の生成位置の違いによる時間分布への影響を検 討した。結果を図4.16に示す。横軸はpsを単位とする時間軸である. 上から順に初期電子生成位置がアノードから5、30、90を示 す。電子なだれ中の電子数が個に発展するのにおよそ10の距離が必 要であるので、5ではストリーマー発生に達していない。30、90は十分到達している。初期電子がアノード近くで生成した場合は速く分布幅も 狭いが、距離が遠ざかるにつれて遅く、かつ分布の幅も広がっている。これらを ガウス分布で評価した比較を行った。初期電子生成位置と時間分布の 平均値、幅の関係を表4.2に示す。 第一成分の分布は初期電子の発生位置の違いに依存しているといえる。 また、アノードから10以下の距離で生成さ れた初期電子による時間分布への影響はほとんど見られない。