両模型共に紫外光発生の効果をいれると時間分布に2重構造(テイル成分) があらわれた。
模型1による時間分布を図4.13に示す。左図は紫外光の効果を入れず に計算したもので、右図は紫外光の効果を入れたものである。紫外光の効果を入 れることにより、遅れた成分があらわれたことがわかる。新規成分の割合は全体 の17%であった。また、時間分布のRMSをみると、紫外光の効果を入れない場合 では28psに対し、入れると36 psと分布幅が拡がった。紫外光の効果を入れない 場合の時間分布は時間と共に増加する形状を示し、初期電子のギャップ中の位置 によるためと考えられる。紫外光の効果を入れると、カソードへの飛び火が発生 するために、最大ギャップ長を利用しうる事象が増加する。左図の時間分布の最 大の広がりは100ps程度あるが、右図においては紫外光によって新規に加わった 成分も同様に100ps程度の広がりをもっている。 よって模型1の取り扱いではギャップ中のどこで作られた光子もカソードに到 達しており、紫外光による飛び火のために分布が拡がっていると考えられる。
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模型2による時間分布を図4.14に示す。左図は紫外光の効果を入れず に計算したもので、右図は紫外光の効果を入れたものである。模型1とは分布の 形状が異なり、第一成分がガウス分布を示した。また、紫外光の効果によりあら われたTail成分は、ピークをもつ形となった。紫外光の効果を入れない場合は時 間分布の最大の広がりは300ps程度であった。紫外光の効果を入れるとTail成分 だけでも広がりは80ps程度であった。よって、カソードから高々ギャップ長の4 分の1程度で生成された光子しか影響を与えていないと考えられる。第一成分を ガウス分布で評価し、分布のを比較すると、左図では51 ps、 右図では52 psであった。またTailは全体の16%であった。
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両模型の計算結果と報告されている実測値を比較する (表4.1参照)。但し、模型1、 模型2は印可電圧4.5kVで計算したが、実測値は印可電圧が4.6kVでの測定値であ る。模型1は模型2よりもシャープな分布を示すが、低エネルギー電子の散乱を考 えない模型1のほうが、1衝突間にエネルギーを得やすく、電子なだれの速度が3 倍速い。また、 模型1ではストリーマーへの移行は考えていないために、初期電 子位置によるゲインの違いが大きい。そのためアノードから遠い電子なだれが主 に時間特性を決めていると考えられる。明らかに低エネルギー電子の取り扱いを 丁寧に行った模型2の方が実測値に近い結果を与えていることがわかる。 模型2はほぼ実測値を再現していると言えよう。